ゲストハウスのクララさん

ゲストハウスGolden Treesの管理人クララさんのちょっと変わった日常を綴ったブログ

カードはどこへ消えた? クララさんは考えた。

お客様の相談事。

 

ゲストハウスなので、泊まっていかれるお客様は毎回違うのですが、部屋の清掃をしているからこそわかる、人間性というのは、確かにありますね。

 

そんなお話がある。

 

ご利用されてから、忘れ物のお問い合わせというものがある。

クララさんの場合であれば、基本的に清掃している途中に気づくので、見つかれば、お客様へお電話してお返しする、というのが通例だ。

 

しかし、残念ながらない場合もある。

ある時、坂本様というお客様がいらっしゃった。

坂本様がお帰りになられて、しばらくたった後の事である。何が起こったか電話があった。

 

坂本様「すいません。昨夜利用した坂本です」

 

クララさん「坂本様ですね。どうされましたか?」

 

坂本様「いえ、そちらにカードの落し物がなかったかと思いまして……。」

 

クララさん「カード……ですか?」

 

坂本様「はい。社員証ICカードが入ったカードケースというのが正確ですが」

 

クララさん「カードケースですか。少なくともこちらでは見つけておりませんが……」

 

坂本様「そうですか。カードをポケットから出したのは、荷物の整理をしたgolden trees以外には、見覚えがなかったものですから……」

 

クララさん「なるほど。電車に乗ろうとして気づかれた感じですか?」

 

坂本様「そうですね。色々探してみたんですがなくて」

 

クララさん「部屋にはそういったものはありませんでした。お急ぎのところ大変お困りかと思います。ちなみに坂本様、お帰りになってからしばらく経ちますが、今まではどこにいらっしゃいましたか?」

 

坂本様「はあ……。カフェでモーニングしてましたが。」

 

クララさん「なるほど……。ちなみにカフェにはご連絡されましたか?」

 

坂本様「いえ、まだです、まずはこちらにご連絡してみようと思いまして」

 

クララさん「なるほど、そうでしたか。では一度、先ほどご利用されたカフェの方へご連絡されてみて下さい。おそらくそちらの方で落とされたのではないかと思いますので」

 

坂本様「はあ、そうですかね……。カード出した記憶はないんですが」

 

クララさん「おそらくトイレの方で落とされたのではないかと思います。ポケットからハンカチを取り出すときに、一緒に落とされたのではないかと」

 

坂本様「え……、まさか、そんな……。わかりました!」

 

その20分後、坂本さんから無事戻ったというご連絡が入った。

 

坂本様「なんでわかったんですか?」

 

クララさん「坂本様は、似たような種類のものをまとめて置いておく、割合、整理される方で、また、綺麗好きという印象がありましたので、ハンカチとカードを一緒にポケットに入れていたのではないかと思いました。そうなると当然、トイレに行ってハンカチをお使いになると思います。坂本様でしたら、そういった時、適当に済ませる方ではないかなと思ってますので。ハンカチを出した時、落としたら、割と気づきにくいものです。薄いものほど特に。場合によってはスマホなどと一緒に入れていると、ものが入っている感はあるものですので。朝カフェとなると、一番最初にハンカチを使うこともありますから。」

 

坂本様「はい。基本的にスマホとハンカチを一緒には入れないですが、その時はまだ未使用だったこともあって、たまたまスマホと一緒に入れてました。出した時に一緒に落としたのか……」

 

クララさん「薄いものだと以外と気づかないものです。時間も時間ですので」

 

 

後にクララさんは話してくれた。

水回り、ベッド、掛布団、作業机の上、全部が全部というわけではないのですが、坂本様は、お客様とはいえ、きちんと使用されたものを整理して退去される方でした。お客様の鏡ですね。

そういう方ですから、普段の生活でも、所作が基本的にしっかりされているんですよ。徹頭徹尾、というわけではさすがにないでしょうが、綺麗好きの方って、ハンカチくらい、持ち歩いているものですよね。

男性って持ち歩いていない方も多いですけど。

ICカード社員証は、よく使うものでしょうから、ポケットに入れておいたのでしょうし、なるほど、そうなれば無意識のうちにハンカチも、しかも未使用となれば、一緒に入れておく可能性が高いですよね。カフェのモーニングだと、退店されるくらいでお手洗いをご利用されることもあるでしょうし。

 

ううむ。基本的に1回限りのゲストハウスだからこそ、普段の行動が如実に出やすいということか。

一度でもご利用されたら、さらりと自分という人間がどんな人か、案外見られているかもしれない。

 

(※この物語は実在の場所と施設と関わる人々を元にしたフィクションです。)