その目に映る何か。その部屋にあるのは過去か、未来か。
さてそれでは、管理人クララさんの、お仕事を覗いてみよう。
といっても、基本的には下宿人対応と、お部屋の掃除である。もちろん、その他、求人や経理など、諸々の事務作業になるけれど。
クララさんは、ホテルの清掃を仕事にしていたこともある。
ホテルの清掃というのは、比較的単純作業で、洗面所やシャワー室、トイレなどの水回りの掃除。いわゆる磨き上げ、吹き上げ。そしてベッドメイクに、部屋全体の掃除機、吹き上げ、である。しかし、クララさん曰く、これをただそれだけやるのでは、2流である。
あなたは、決められた時間内に、どれだけ綺麗に、部屋をリメイクできますか?
それがクララさんの、仕事について話している時に、決まって言われることだ。これはこだわりという名の遊びであったりする。クララさんの掃除した部屋と、他の人が掃除した部屋は、何か感じが違った、いい感じに。そういわれることも、ホテルメイク時代にはあったとか。然るべくしてして、人はプロと呼ばれるのだ。
話が少しずれてしまった。それでは、そんなクララさんの、ゲストハウスの掃除についてご紹介。
ゲストハウスの清掃を、たとえて言うなら、1件のお家の丸々お掃除。そもそもホテルと違って、作りが比較的複雑だ。バスタブは勿論あるし、トイレが2つあったりする。
やりがいがあります、とクララさんは言う。
そして部屋の使い方で、その人がどんな人だったか、わかるという。ちなみにクララさんはどんな人ですか? と聞いてみたら、謎が多い人の方が素敵じゃないですか、との回答を頂いた。教えてくれたって、いいじゃないか。
ちなみにお客様がちょっとした忘れ物をしていくことがある。これをどうするのか、想像にお任せしようか。盗むのでは決してない、決して。
もろもろの清掃完了後には、終わったお部屋の写真を撮って、管理会社への報告だ。独立したとはいえ、あくまで個人事業としての契約の上に成り立っている仕事なのである。
クララさんの目には、掃除をしながら何が映っているのか、その部屋の過去か、それとも未来か。
掃除が終わった後、クララさんは言った。
次はどんな人が来るのか、愉しみですね。
(※この物語は実在の場所と施設と関わる人々を元にしたフィクションです。)